【パネラー発言1 遊び環境作り】

     建築家、アトリエ・そうわーくす主宰 奥津 輝久



こんにちは、前のほうで喋らせて頂いて申し訳ないです。
見渡すと今日は、錚錚たる方々がいらしていて、私は偉そうな事を言う立場じゃないと思いますが偉そうなことを言わせて頂いて、少しでも参考にして頂けたらと、ささやかに思っております。
私は“たつのこ村”では、講師をやってます。
さっき、お話しを頂いた笠井先生は村長で、高木さんは事務局。私は事務局ではなくて一講師です。

“たつのこ村”のことを紹介します。私は“たつのこ村”以外にも、いくつか地域活動をやっていますが、今一番面白いなぁと思っているのが“たつのこ村”です。
“アトリエ・そうわーくす”の活動については、後ろに模造紙で紹介しておりますので、あとでそこも見て頂きたいと思います。

地域活動の中で、個人的には一貫して『あそび』をテーマにしています。なぜ『あそび』なのか・・・
本業は、建築設計なのですが、最近『癒しの空間』というのが流行っていました。老人ホームの設計をやるんですけど、『癒しの空間』をつくったところで、ボケたご老人は、それ以上にボケてしまう。
しかし、そこに『あそび』が入ってくると、目が輝いて来るんですね。
『あそび』の力って、凄いものがあると思います。

“たつのこ村”ってのは、まさに『あそび』の環境づくりをやっている所です。
“たつのこ村”が面白いと思うのは、何も、自然がいっぱいであれだけ纏まった空き地があることだけではないです。
『あそび』を自分でつくれるということに一番の魅力を感じています。

実は、子ども達って、もともと“あそぶ力”を持っているんですね。
先ほど村長から「・・・遊び場がない。大人たちが遊びを摘み取ってしまう」ようなことを話されてましたけど、子ども達って放ったらかしにしておくと、自分で勝手に『あそび』を見つけていくんですね。
少なくとも、私が付き合っている子ども達って、放っといても遊び場を自分でつくるし、遊び方も考えるし、そこでコミュニティーも自発的に作っていきますね。
それだけ子ども達って凄まじいパワーを持っていて、大人たちがそれを摘み取っているだけなんじゃないかなって気がしています。

“たつのこ村”で私がやりたいことは、どっちかっていうと子ども達に対してよりも、「大人たちが、子ども達の能力を摘み取ることを、止めてもらう」教育だと思っています。
だからこそ、安全な場所が必要ですし、「アレしちゃいけない、コレしちゃいけない」といった規制の無い場所が必要になってきます。だから“たつのこ村”があるんじゃないかなぁと思います。

自分の小さい頃って、家の近くには今みたいに整った公園って無くて、さっき田中さんとも話をしましたが、滑り台で遊ぶためには学校に忍び込まなきゃならなかったし、シーソーもジャングルジムも遊べるところは無かった。
だから忍び込んだし、寺のお墓でも遊んだし、あるいは高度成長期だから工事現場や廃屋がいっぱいあったから、入り込んでは血みどろになって遊んでいましたね。
そういう危険な遊びが許されていた時代だったと思います。

今、そういう『あそび』が出来なくなってきている。それは大人の社会から見れば、管理する必要が無くなってきている。・・・どう言えばいいのか・・・整ってきている。
場所があまりにも整ってきている。だから自由に遊べなくなってきている。・・・ごめんなさい。違う方向にいってしまった。

そういう“血みどろになって遊ぶ経験”が出来なくなってきている。
私は、よく保育園とか小学校で、子ども達に教えるんですけど、まず先生に向かって「今日は、怪我をしてもらいます」って言うんです。
怪我をすることが、良くないことだと思われてますよね。
それで、怪我もしたことのない子ども達が、大人になって大丈夫なんだろうか、だから人を傷つけても痛みの分かんない大人になってしまうんじゃないかって、危機感をすごく感じてまして、私は、敢えて怪我をしてもらおうと。
それでこの前、痛ましい事件のあと、ある教室で「奥津さん、ここではナイフを使わせないようにして下さい」って言われて、「いや、使わせます」って敢えて反発したんですけど、難しいですね。
でも少なくとも“たつのこ村”では、そういう遊ばせ方をしたいし、子ども達の持っている遊び能力を自由に引き出してあげたい。
今“たつのこ村”は、午前中行かれた方は思われたかもしれませんが、雑然としていますね。
まだつくり初めで、いろんなものが雑然とポツポツ出来てきていますけど、私には、何をやろうかとか、どういう遊び場にしようかという頭は無くて、子ども達に考えてもらおうと思っています。

今日お配りした資料の中で、『公園づくりワークショップ』というのがありますが、子ども達で、どういう遊び場が欲しいかという意見の出し合いをやったんです。
ここでは実に色んな意見が出てきて、動物園つくりたいとか、トンネル掘りたいとか、また少数意見には新しいものが含まれていると思うから、いつも目を向けるんですが・・・。

“恐怖の公園”というのがあるんですね。それはまさに私が小さい頃、廃屋の中で経験したあのドキドキするような遊び場だと思うんです。子ども達は、そういう遊び場も欲しているんですよ。
でも家の近所では、なかなかそういう恐怖体験する機会がないですよね。「暗くなったら帰って来なさい。
車がはげしいから、あの道路では遊ばないで」とか、危険な場所では遊びづらくなってきている。
だから私は、恐怖が味わえるような、“危険な遊び場”を提案していきたいと思っています。

話したいことはいっぱいあったんですが、7分ということで、もう7分過ぎてます?
できれば、こう前から一方的に話すんじゃなくて、あとの時間をたっぷり使って、皆さんが興味をお持ちのことに対して答えられることを答えていきたいと思っていますので、一旦ここで私の話は終わりたいと思います。どうもありがとうございました。

  

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